結局のところ、夜勤明けに飛び出してきた。
プランは夜行バスに乗って明日の早朝には名古屋に舞い戻るという、費用は最低限に抑えられるものの体力は最大限に消費するというもの。
しかし、だ。
その最小限に抑えたはずの費用を、ポートレート撮影に使ってしまう私は本当に救いがない。
ただ、こんなに晴れた日に、いつも懇意にしてもらっているモデルさんのスケジュールが空いているとなれば、撮られずにはいられないのがフォトグラファーの性ではある。
折角の祇園祭、あわよくば真っ只中に繰り出してと思っていたけれど、マァ、とんでもない話だった。
あの人混みの中で、ポートレートなど撮れるものではない。
結局は鴨川を歩いたり、適当な路地に入ったり、いつもと変わらない撮影をした。
それにしても、凄まじい人出はある程度覚悟して出てきたものの、想像を遥かに超える人間たちが京都にはひしめいていた。
人混みに飲まれるとか、その場の空気が薄くなるとか、そういう言葉がぴったりの人出だった。
モデルさんと別れた後は、その人混みに突入して写真を撮ったわけだが、到底まともな写真が撮れているとは思えない。
おそらくピントはぐちゃぐちゃ、手ブレでブレブレの写真ばかりになっているだろう。
マァ、それでも、天下の祇園祭に出て、その場の空気を堪能出来たことはとても良い経験になった。
帰りはバスでゆっくりと眠ろう。