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ばたこさんには申し訳ないけれど、これは誰に何と言われようとお気に入りで、写真集を編むとすればどうしても外せない1枚なのだ。
台風の風が残る七里ヶ浜で、地元の高校生や観光客に囲まれながら撮った。
海水を足に感じた時の表情を撮ったように記憶しているのだけれど、もう二度と同じような写真を撮ることは出来ないだろう。
美しいポージングをしているわけでも、取り澄ました表情をしているわけでもないが、こちらを真っ直ぐに見つめる目がどうしようもなく私の胸を締め付けてくる。
なまじこのような写真が撮れるものだから、私はモデルとフォトグラファーという関係性について要らぬ苦悩を抱えてしまって、今はポートレートから少し離れている。
ただ、余人はいざ知らず、私にとってポートレートは他者と関わるための重要な手段のひとつであり、これをやめている今は心に穴が空いたような気がいているのも事実だ。
写真に罪があろうはずもないし、またこのような写真を撮りたいと心のどこかで願っているのは確かだから、もう少し時が経ったらまたやり直してみようと思っている。