叢草雑記-

徒然なる日々を。わたくしを定義することはやめた。

変遷


最初にポートレートを撮ったのはまだ鹿児島に住んでいた時で、もう10年近く前になる。

当時はご当地アイドル的な人を撮ったり、福岡まで遠征して撮影会に参加したりしていた。

当時はポートレートを撮る意味などというものを考えたことはなく、魅力的だと思った被写体をただ撮ることに専念していたように思う。

その方針は、三重に来てポートレートにのめり込むようになった当初こそあまり変わらなかったが、おそらく旅を始めてから多少変化して、被写体だけではなく撮る場所についてこだわりを持つようになった。

公園や街中などのありきたりな場所ではなく、私が魅力的だと思う場所でポートレートを撮るようになったのだ。

このやり方は最近も変わっていないし、単純にポートレートを撮るならこれからもそのようにするだろうが、そのようなポートレートを撮りたいという気持ちは今はあまり持っていない。

それよりも、被写体の美醜とか撮るシチュエーションとかは二の次で良いから、特定の被写体をある程度の年月に渡って撮り続けて、その中で発生する被写体そのものの変遷や、私との関係性を撮りたいという願いの方が強い。

これは多少危険な思想で、フォトグラファーと被写体の関係性という点では歪なものではあるが、私としてはカメラを介したコミニュケーションを取りたいだけであって、恋愛感情とか、ましてや下心とかとは全く無縁のものである。

もうかれこれ10年近くポートレートを続ける中で、始めた当初のある意味純粋な動機からすると、今はそれが随分と複雑になってしまっているが、どうせやるやら小難しく、多少の波乱も生み出しながらやった方が愉快ではないか。

こんなことを言いながらも、いつか疲れ果ててまたアイドルのバストアップばかり撮るようになる日が来るかもしれないけれど、それもまた人生だ。