叢草雑記-

徒然なる日々を。わたくしを定義することはやめた。

被写体


人間そのものを撮る時はこだわらないが、写真のワンポイントとして人間を構図の中に入れる時は、その人の佇まいやファッションについてこだわるようにしている。

背筋をピンと伸ばした人が良いとか、颯爽と歩いている人が良いとか、派手な色の格好をしている人が良いとか、私なりの基準があって、やはりとぼとぼ歩くずんだれおじさんよりは、颯爽と歩くロングコートの女性のほうが被写体としては魅力的なのだ。

そして最近は、他人にばかりそれを求めるのはどうかと思うようになって、私も見知らぬ誰かの被写体になれるように真っ赤なジャケットを着て街を歩いている。

顔の造作や所作はなかなか変えられないけれど、せめて服装ぐらいは派手にして、もしよろしければ写真のアクセントとして使ってくださいという訳だ。

ただ、これは私のようなスナップを撮る人間にとってはなかなか勇気のいる行為で、何かトラブルがあった際にあの赤い人に撮られましたと名指しされかねない。

だから、これまで以上に撮影には気を遣わなければならないのだが、これは今まで他人を勝手に撮ってきた私のせめてもの罪滅ぼしなのだ。

私が写り込んだスナップ写真が誰かのSNSに投稿されるその日まで、このくだらない罪滅ぼしを続けてゆくつもりである。