叢草雑記-

徒然なる日々を。わたくしを定義することはやめた。

不審者


街にいる人間を写した、所謂ストリートスナップを撮るのが好きだ。

DⅡを握りながらふらふらと彷徨い、街ゆく人を見つけてはシャッターを切る、さながらハンティングのつもりで写真を撮っている。

このように書くと非常に勇ましいが、小心者の私は常に誰かに誰何されるのではないかと怯えており、もし本当に咎められれば底蓋を開けてフィルムを感光させてみせるしかないと思っている。

一撃離脱を信条にして二度と同じ被写体は撮らないし、真っ黒で小さなDⅡを鳩尾のあたりに構えて撮れば、写真を撮っていることすら気付かれにくいから、幸いなことに今までそのような事態に陥ったことはないけれど。

ストリートスナップを撮る中で付き纏う多少の後ろめたさについては、肖像権云々、後姿なら良い、横顔はよろしくない、個人の判別がどうのこうのと議論がなされていて、今のところ明確な結論は出ていないようだ。

ただ、面倒なものには蓋をしてしまえというのが今の日本だから、いつか街中でカメラを取り出して人に向けることは出来なくなるかもしれない。

なぜストリートスナップを撮るのかということについては、私自身も明確に言語化出来ているわけではなく、私の撮った写真を見た人に何か物語を感じて貰おうというわけでもないし、私が生きた時代の街の様相を記録したいわけでもなく、非常に曖昧なのだ。

だから、見ず知らずの人間をこそこそ撮って、相手に不快な思いをさせるぐらいなら止めてしまえと言われたら、明確な反論も出来ない。

願わくは、撮り鉄のように悪いイメージと共に世間的にクローズアップされることなく、細々とやらせていただきたいのだが今後どうなることやら。

海だの山だの花だのを撮っていれば問題なかったのに、難儀なジャンルを好きになってしまった。