叢草雑記-

徒然なる日々を。わたくしを定義することはやめた。

大甚


本日退寮した。

吃驚するほどに何の感慨も湧かず、大いに期待していた開放感すらも感じないのは一体どういうことだろうか。

明日からは正真正銘のプータローで、私を束縛するものは何もないというのに。

前の職場を辞めた時もこんな感じだったかしらと、一生懸命に思いだそうとしてみるけれど記憶にないようだ。

10時に寮を出た後、友人が空港まで車で連れて行ってくれるというからお言葉に甘えた。

ただ、荷物はホテルに預けられるとしても、チェックインまでの時間は何処かで潰さねばならないから、結局名古屋までお酒を飲みに出て来る羽目にはなったのたが。

最後、最後と言いつつ名古屋名物はだいたい食べてしまっていたから、今回は大甚にした。


実は居酒屋界では非常に有名な居酒屋で、明治からお店を構えている老舗中の老舗である。

15時45分の開店を目掛けて飛び込んだが、30分もしないうちにお店の中は満員で、リタイア組の老人もいれば、立派なスーツを着たひとり客もいる、グループ客もいるといった感じで、今日が平日だということを忘れてしまう。

熱燗と、料理は鰤の刺身、牛すじの煮込み、板わさ、がんもどきの煮たものを頼んだ。

メニュー表は無く、テーブルに並べられたサンプルを指差して、自分用に皿によそってもらうシステムは最初こそ戸惑うが、実物を見ながら選ぶのは愉快である。

それに、ほとんどが外国の方ながら店員さんが沢山いるので、声をかけるタイミングを考える必要がなく、その点非常に気楽だった。

お会計は3,200円と思っていたほどは安くなかったが、お腹いっぱいになったので良しとする。

カスタマーの声がやたら大きい現代社会に於いて、客それぞれが分を弁えつつ、慎ましやかにお酒を飲むことが出来る空間は非常に貴重な存在で、そのひとつがこの大甚だと思う。

また名古屋を訪れることがあれば、必ず行こう。