叢草雑記-

徒然なる日々を。わたくしを定義することはやめた。

スナップ写真のこと


フィルムをやめてしまってから、自分が撮るスナップ写真が詰まらないと感じ始めているのは、フィルム写真が持つ独特の質感というアドバンテージを失ってしまったことも勿論だが、そもそも写真を撮るということに対して真剣味を欠いてしまっているからだろう。

その真剣味とは、フィルムで撮ると金がかかるから真面目にやるというような精神論のことではなく、少しでもまともな写真が撮れるようにと行っていた具体的な努力のことでもある。

そしてその努力を私に常に強いてくれていたのが、バルナックライカだった。

一度写真を撮ると決めて出掛けたからには、常に虎視眈々、シャッターチャンスを窺う姿勢とか、その一瞬にシャッターを切れるように予め露出やピントの位置を設定しておく周到さとか、最善の構図や光の環境が整うまで待つ粘り強さとか、勿論、それで毎回全てが完璧にはゆくわけではなかったけれど、常にそういう意識を持って写真を撮ることが、良いスナップ写真に繋がっていたのだと今更になって思う。

被写体を発見して、それがファインダーの中で良い位置に来るように距離を調整しつつ、同時に露出とピントを手元で合わせるという、一種ハンティングのような緊張感を、デジタルカメラに変えてからは味わえなくなってしまった。

これからも適当に写真を撮って、其れにいちいち不満を感じるぐらいなら、多少お金が掛かったとしてもフィルムに戻ってしまおうと思って、バルナックのDⅡを買い直した。

デジタルカメラで撮って、Lightroomで色味を弄るのも愉しくはあるけれど、単なる趣味として撮影の過程も愉しむのであれば、バルナックライカで撮った方が桁違いに満足度が高くなる。

以前のように、バルナックライカばかりを使うということは出来ないだろうから、GRも使いつつ、フィルムの高騰が行き着くところまで行き、いよいよ財政的に音を上げざるを得なくなったら、その時に止めることを考えよう。

それまでは、フィルムの値段が高いこと、現像代がかかることは必要経費と考えて、何か他のことを我慢して捻出してゆく。