叢草雑記-

徒然なる日々を。わたくしを定義することはやめた。

隠密

 

熟練の潜水艦艦長は潜望鏡を海面に出す際、レンズの部分が海面に出て白波を立てるか立てないかという刹那の間に周囲の情況を観察して、また直ぐに海中に引っこめてしまっていたという。

隠密行動が絶対の潜水艦において、長々と海面に潜望鏡を出し続ければ敵に発見されるリスクが非常に大きくなるから、そのリスクを出来るだけ減らす為にそのようにするのだが、私は街中でスナップを撮る時も似たようなことを心掛けている。

敵、もとい被写体に気付かれたくないのは私も全く同じ思いだから、やたらとカメラを露出して歩かないようにしているし、被写体に対してレンズを向け続けないようにしているし、写真を撮ったあとは直ぐその場から離れるようにしているのだ。

盗撮でもやっているのではないかと思われそうな気の遣い方ではあるが、日本の社会がカメラというものにどんどん不寛容になっている現状では、このようにせねば無用なトラブルを惹起しかねない。

ところ構わずスマートフォンで写真を撮っているような人間は幾らでもいるのにねと、毒付きたい気持ちは大いにあるけれど、いつでもマイノリティは辛い立場である。