鴨川という、実にのっぺりとしていて、穏やかであるという点を除けば取り立てて魅力のない川が、私は大好きである。
ここには様々な人たちが集う。
家族も、カップルも、友人どうしも、もちろん私のようなひとりも。
みなそれぞれに事情があって、それなりに悩みも悲しみも抱えながら生きているだろうに、今この瞬間だけは、その煩悶に素知らぬ顔をしながら、談笑したり川を眺めたりしている。
ここに集う一人ひとりが点描画の点のようなもので、もしこの人達がここからいなくなってしまえば、鴨川はただ穏やかなだけの川になってしまうだろう。
だから私も、点描画のひとつの点になるために、この鴨川をまた必ず訪れよう。
その時はいつもと同じようでいて、実は世界に二枚とは存在しない写真を撮るのだ。