荷物を取り出せない
実は小豆島に渡っていた。ずいぶん愉しく島内を散策したのだが、最後の最後でやらかしてしまった。
土庄港から、20時10分発の最終便で高松に帰るべくフェリーターミナルに向かったのだが、荷物を預けたコインロッカーがあるターミナルが閉まっていたのだ。
荷物を取り出すことができない。
着替えばかりの荷物だが、これからの旅程にはなくてはならないので、明日の朝一番でもう一度小豆島に渡る羽目になってしまった。
旅のごたごた、まぁ、仕方がない。
(確認すると、コインロッカーの利用時間は18時までとなっていた。確認しなかった私が全く悪いけれど、観光客には少し不親切かな。)
オリーブとごま油の島
小豆島を訪れた一番の目的は、自由律俳句の俳人、尾崎放哉の終焉の地を訪ねること。漂泊の自由律俳人である尾崎放哉は、瀬戸内海に浮かぶオリーブとごま油の島でその生涯を閉じた。
放哉が生きていた大正には、そんなものなかっただろうけれど。
高松発のフェリーが島に近づくと、ごま油の香りが漂ってくる。
島内の至るところにオリーブが植えられていて、オブジェなんかもあったり。
その直ぐそばには、放哉上陸の句碑が建てられていた。
尾崎放哉記念館
土庄港から20分ほど歩くと、晩年の放哉が過ごした南郷庵がある。建物は1度取り壊されたようで、再建されたものが記念館になっている。
中の写真は撮ることができなかったが、六畳の御大師様をお祀りする部屋と、十畳程の部屋が2つほどあり、本で読んでイメージをしていたよりはずっと広く、立派な建物だった。
私が暮らしている寮の部屋よりは少なくとも。
展示物は直ぐに見終わってしまったけれど、1時間ぐらい、蝉の声を浴びながら、ゆっくりさせていただいた。
放哉の体温を感じたかったなどといえばとても気障になるけれど、ここに少しの間滞在して生活してみたいと、変なことを思ったりした。
そのあと、直ぐ近くにある放哉のお墓にもお参りした。
こちらは吃驚するぐらいこじんまりとしていて、寂しい印象を受ける。
著名な俳人とはいえ、あくまでも静かに死んでいった放哉のお墓としては、相応しいものであるのかもしれない。
放哉の詳細については、記念館のホームページに詳しいから割愛するけれど、私は、彼の自らを死に向けて追い込んでゆく生き方に強く惹かれている。
私は放哉のようにエリートコースを歩んできたわけでもないし、放哉にとっての俳句のような打ち込める何かを持っているわけでもないのにないにもかかわらず、彼に憧れてしまうのはなぜだろうか。
それは多分、何もかも打ち棄てて、静かに死んでいった彼が羨ましいのだ。
長生きこそが最大の倖せだとされる今の時代に、死ぬための生活を送るというのは理解され難いことだろうけれど、だからこそ、強く憧れる。
ただ、死に憧れるということは、そのまま生き様に憧れるということだから、これから私は、いろんなものをどんどん棄てていかなければならないのだが、私の場合は棄てるのが惜しくなるような大層なものを持っていないので、先ずはそこから。
その後は、時には世間を敵に回すような勢いで棄てねば。
オリーブ公園と風車
尾崎放哉記念館を後にして、次に向かったのが道の駅 小豆島オリーブ公園。ギリシャ風の風車と、魔女の宅急便の真似事をして、空中浮遊の写真が撮れることで有名な道の駅である。
もう少しカラッと晴れていれば、もう少しギリシャ風の写真が撮れただろうに、湿気の多い、日本の風景になってしまった。
魔女の宅急便の真似事は、ひとりで出来るはずもなく、私は指を咥えて見ているしかなかったが、箒を貸し出す事務所には、人だかりができていて、とても愉しそうで、恋人が出来たらまた必ず訪れようと思いました○
畑に咲いていた向日葵に癒された。
エンジェルロードとやら
大体、景勝地というのは恋人の聖地になりがちなのだが、ご多分にもれず、このエンジェルロードとやらも恋人の聖地になっている。ちなみに、エンジェルロードには、約束の丘展望台という見晴らしの良い高台があり、そこからなら道が繋がっている様子がより分かりやすいらしい。
らしい、というのは、撮影スポットにはカップルが行列を作っており、さすがにひとりでその列に並ぶのは恥ずかしかった。
だから私も、恋人が出来たらまた必ず訪れようと思いました○
高松で控えめに飲んだ
ここまでは何の問題もない小豆島探訪だったのだが、フェリーターミナルに着いてからのごたごたは先に書いた通り。宿泊したホテルの周辺には探すほどの居酒屋もなく、そもそも日曜日で閉店しているお店も多かったので、やっていた創作和食の居酒屋和っかで軽く食べた。
r.gnavi.co.jp
昨日のお店とは打って変わり、料理も雰囲気も、何もかもが小洒落た印象。
お得3点セット刺身盛りと、鶏のなめろう風、鱧のお吸い物はどれも美味しかったが、特に刺身盛りは5種類の魚が愉しめたので、非常に満足した。
そして、香川のお酒、凱陣を飲むことができて良かった。
旅は、もう少し続く。