色を捨てた、ということをこの前書いたのだが、先日ポートレートを撮った時に少しだけ後悔した。
その日はあえてモノクロのフィルムしか持っていかなかったのだが、薄くオレンジに染まった空や鈍く輝く海など、これをカラーで写し取れたらと思わずにはいられなかったのだ。
ただ、それは私が時折りデジタルカメラを使いたくなるのと同じく一過性のものだろうし、この日の写真が白と黒に彩られて現像から上がってきた時には霧散してしまっているだろう。
思えば、私はこれまで多くのものを捨ててきた。
ズームレンズを捨て、オートフォーカスを捨て、デジタルカメラを捨て、遂には色まで捨ててしまったのだ。
大体の人が写真を撮るために必要だと考えている要素をここまで削ってしまって、私は一体何がしたいのかと自問することもあるが、そうやって削ぎ落としてきたが故に得られるものが必ず何かあるはずで、いつかそれが私の写真の中に出て来てくれると嬉しい。
とりあえず今は、モノクロが思い通りに扱えるようになりたいと思う。