叢草雑記-

徒然なる日々を。わたくしを定義することはやめた。

trade-off


エルマーは素晴らしいレンズだ。

小さく、軽く、描写も端正で。

そして、DⅡに装着した時の見た目がこれまた素晴らしく、惚れ惚れしてしまう。

スナップで使うカメラとして、これほどに完成された組み合わせが他にあるだろうか。

90年も前のレンズとカメラで写真を撮っているという感慨も相まって、多少フィルム代がかかったとしても、浪漫の為には已むなしと思わされてしまう。

ただ、少し暗い。

夜は明るいフィルムを入れなければならない。

そして、あまりにも端正な描写をするから、時々退屈を感じる。

対してズマリットは大きい。

DⅡに装着すると明らかにフロントヘビーで、スナップ用として気軽に持ち出すのには抵抗がある。

さらに描写も危うい。

開放近くで撮ると滲みが発生して、どこにピントが来ているのか分からない時がある。

ただ、色のりは明らかにズマリットの方が良い。

そして、開放f値が1.5と明るいから時間帯を気にせず撮れるし、装填するフィルムの感度についてもそこまで神経質にならずに済む。

先に述べた描写の危うさも、現像から上がってきた時の愉しみに繋がっている。

携帯性と確実性ではエルマーだが、汎用性と意外性ではズマリットなのだ。

私は、レンズは1本しか持たない主義だった。

それがここに来て揺らいでいる。

ここまでキャラクターが違うと、どちらとも所有していたくなる。

実に悩ましい。